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アクセスは最悪なのに、地価上昇率は6年連続1位。Louis VuittonやMonclerも集う“世界のニセコ”ブランディングの正体

冬のニセコ、羊蹄山とニセコ連峰を背景に広がるリゾートの街並み。
“世界のニセコ”と呼ばれる山岳リゾート。自然資本とブランド資本が重なり合う場所。

アクセス条件は「最悪」なのに、地価は6年連続全国1位という逆説

冬の尻別川と霧氷の木々、その奥に羊蹄山がそびえる風景。
日本有数の清流・尻別川と蝦夷富士とも呼ばれる羊蹄山。ニセコの「自然資本」の中核。

ニセコは、蝦夷富士・羊蹄山とニセコ連峰(主峰・アンヌプリ)に囲まれ、日本一の清流と称される尻別川が流れる場所だ。冬は、Japow(超軽粉雪)を求めるスキーヤー、スノーボーダーで溢れ、夏は尻別川のラフティング、羊蹄山麓のサイクリングや登山、そしてゴルフまで、四季のアウトドアが滞在の理由になる。尻別川は通算21回日本一きれいな川に選ばれた実績を持ち、グリーンシーズンの体験価値を下支えする「見えない資産」でもある。

Higashiyama Niseko Village, a Ritz‑Carlton Reserve のダイニングから羊蹄山を望む。
ゲレンデ直結のラグジュアリーホテルが立ち並び、「泊まる場」と「眺める景色」が一体になった。

この豊かな自然資本に対し、国内外の資金・ルール・受け皿となる施設が重なり合うことで、「世界のニセコ」という新しいブランドが立ち上がりつつある。2020年にはパーク ハイアット ニセコ HANAZONO 東山ニセコビレッジ・リッツ・カールトン・リザーブが開業し、ゲレンデ直結のラグジュアリーホテル滞在が当たり前の選択肢に。その後もインターコンチネンタル・ホテルズ・グループによるSix Senses(2020年代後半予定)、 Aman Niseko(2030年開業予定)などのプロジェクトが続き、ゲレンデ直結のラグジュアリーホテル滞在が定着。2023-24シーズンにはLouis Vuittonがポップアップと特装ゴンドラを展開、Monclerも常設拠点Moncler Corner Nisekoを構え、雪山にラグジュアリーショッピングの場所としての役割も与えてみせた。

ヒラフ交差点のMoncler拠点。
北海道ニセコにおいてモンクレール・グルノーブルの特別な体験を発表。
ニセコに現れたLouis Vuittonポップアップストア。
ルイ・ヴィトンがゲレンデに登場! 北海道ニセコにオープンしたポップアップストアが話題
ナイターの雪面上を進むLouis Vuitton特装ゴンドラ。
「ルイ・ヴィトン」がニセコのポップアップ披露 外国人富裕層らをお出迎え

2023–24シーズンには Louis Vuitton が雪原にユルト型ポップアップストアを構え、モノグラムでラッピングした特装ゴンドラを走らせる一方、Moncler は「Moncler Corner Niseko」という常設拠点をヒラフ中心部にオープン。ゲレンデ上にラグジュアリーブランドの世界観が立ち上がることで、ニセコは「ただ滑る場所」から「雪上でハイエンドなショッピングや体験を楽しむ街」へと意味づけが変わった。こうした動きは PR TIMES、Pen Online、WWD Japan など各メディアでも取り上げられ、雪山リゾートとラグジュアリーブランドの組み合わせが一つのニュースバリューとして認識された。

かしながら、かつてのニセコは「札幌から遠い不便な地元のゲレンデ」だった。千歳空港から直行バスでも2時間半、鉄道なら小樽経由で約4時間という“半日級”のアクセス摩擦がつきまとう。にもかかわらず、ここ10年で情勢は大きく変化した。国税庁が2020年7月に発表した路線価(2020年1月1日時点)によると、全国約32万地点の標準宅地における上昇率は6年連続で全国1位だと報じられた。2014年と比べた1㎡あたり評価額は、およそ14.4倍に跳ね上がった。「遠いのに価値が上がり続ける」という逆説は、距離コストを上回る到着後の体験すなわちカスタマージャーニー設計の帰結である。

ニセコが「世界のリゾート」になった理由:5つのポイントで読み解く

① キラーコンテンツを「統治された自由」として制度化した

ニセコの強みは、単にパウダースノーのクオリティが高いというだけではない。バックカントリーを含めた滑走体験の根底には「Niseko Rules」と呼ばれる独自のルールがある。ゲート制と日々更新される雪崩情報を組み合わせることで、場外滑走の可否やエリアを管理し、「決められた枠の中で思いきり自由に滑る」ことを可能にしている。

言い換えれば、ここには"自由のための規律"がある。このルールが国際スキーヤーに受け入れられ、単なる安全対策ではなく、「ニセコならではの体験価値」としてブランド資産化した。価格や距離といった条件では代替しにくい、独自のプロトコルを制度として実装している点がポイントだ。

② 官主導ではなく、民間の長期資本がリゾートの姿を作り替えた

ニセコの変貌を後押ししたのは、行政主導の大規模開発ではなく、長期視点を持った民間資本だった。2007年にはハナゾノエリアが香港の不動産デベロッパー PCPDによって取得され、2010年にはマレーシアの YTL Hotels がニセコ・ビレッジをアメリカの Citi から買収。これらの外資系デベロッパーに加え、東急によるグラン・ヒラフ側の段階的な投資が重なり、「滑る → 泊まる → 消費する」という一連の体験が上書きされていった。

雪上に設えられたVeuve Clicquotのポップアップラウンジとランタン。
Veuve Clicquot のポップアップラウンジなど、雪上に「目撃→購買→UGC」の導線を敷くブランドも増えている。

Louis Vuitton や Moncler、Veuve Clicquot といったブランドは、雪山そのものを「目撃 → 購入 → 写真や動画で共有」という一連の行動がスムーズにつながる場所として設計した。行政は高速道路の延伸などインフラ整備に注力し、民間はリゾート全体の価値を高める投資を行う。「民が攻め、官が支える」という役割分担がうまく機能している事例と言える。

③ 何でも盛り込む「幕の内弁当型」にせず、深く洗練された体験に絞り込んだ

多くの観光地が陥りがちな落とし穴は、「あれもできます、これもあります」とコンテンツを寄せ集めてしまうことだ。その結果、どれも深掘りされず、平均点のアクティビティが並ぶだけになりがちだ。ニセコはその逆を選んだ。雪、温泉、食、ナイトライフといういくつかの軸に絞り、その体験を徹底的に磨き込んだ。

ニセコのバーMusuの夜景。カウンター越しに雪景色が広がる。
街のナイトライフを担うバーやレストランが集積し、小さな「街区」としての顔も持ち始めている。

雪上でのラグジュアリーな舞台装置としてのホテルやラウンジに加え、飲食店やバーが適度な密度で集まる"小さな街"を整えることで、「見せ場」と「買い場」、さらには「夜の過ごし方」までが一体となった体験になっています。混雑や凡庸さを嫌う富裕層にとって、「わざわざ時間をかけてでも行きたい」と思える場所になっていることが重要です。距離のネガティブな印象を、体験の質で上書きしたと言えるでしょう。

④ 外資ラグジュアリーホテルが、都市ブランド価値の保証人になった

すでに営業している Park Hyatt Niseko Hanazono Higashiyama Niseko Village, a Ritz‑Carlton Reserve に加え、Cassia Hirafu Niseko(2025年予定)、Aman Niseko(2030年予定)、Six Senses(2020年代後半に開業予定と報じられている)など、ラグジュアリーホテルブランドの参入が相次ぐ。

Park Hyatt Niseko Hanazono の外観と雪景色。
国際的ラグジュアリーホテルの投資判断そのものが、「この土地に長期的な価値がある」というシグナルになっている。

国際ブランドのホテルが長期投資として拠点を構えるという事実そのものが、「この土地は長期的に見ても価値がある」というシグナルになり、別荘やコンドミニアムなどへの富裕層投資に安心材料を与えます。ホテルのブランドロゴがそのまま都市ブランドの信頼性を担保する"保証人"として機能しているとも言えます。

⑤ 消費だけで終わらせず、「投資の回路」を太くした

観光消費は季節や為替の影響を強く受け、年によって大きく振れます。ニセコは短期的な来訪者数だけを追いかけるのではなく、ホテルコンドミニアムや別荘といった資産としての回路を太くすることで、長期的なお金の流れを取り込んできました。

そうすることで、宿泊収入などのインカムと地価上昇によるキャピタルゲインの両方を狙う投資マネーを惹きつけています。コロナ禍のような外的ショックがあった時期でも富裕層の投資は動き続け、それが地価上昇の粘り強さにつながりました。「遠いのに勝っている」という実態は、観光消費に依存せず、投資の回路をきちんと設計してきた結果だと言えるでしょう。

まとめ:距離コストを上回る「到着後の物語」をどう設計するか

ニセコは、圧倒的な自然資本に、Niseko Rules のようなローカルルール、外資を含む長期投資、ラグジュアリーホテル群、雪・温泉・食・ナイトライフに絞った体験設計、そして資産としての投資回路を重ねることで、「遠くても行く価値がある場所」をつくり上げました。

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