COACHやPUMAとのコラボで有名になった日本発のバーチャルモデル「imma」とは何者か――本物のモデルに置き換わる存在なのか?

immaとは何者か
日本発のバーチャルヒューマン imma は、ピンクのボブヘアが トレードマークの「日本初のフルスケールなバーチャルモデル」だ。制作は東京のAww Inc.。2018年のデビュー以降、ファッションから金融、 リアル店舗のインスタレーションまで領域をまたぎ、いまやグローバルキャンペーンの顔も張る存在になった。 ファンベースは当初の南北アメリカから、インド、東南アジア、オセアニアへと広がり、 SNSフォロワーはトータルで100万超え。中心はZ世代で、男女比はほぼ半々という構成だ。 東京2020パラリンピック閉会式への出演や『Harper’s BAZAAR』台湾版の表紙、野村ホールディングスの 「新NISA」広告など、露出はファッション業界の内輪を軽く飛び越えている。

2024年には COACH のグローバルキャンペーン「Find Your Courage」に登場し、Kōki などの人間アンバサダーと 横並びで出演。「現実とは何か?」を問うストーリーの中で、imma はバーチャルでありながら感情を持つキャラクターとして 動き、リアルとバーチャルの境界線を揺さぶる役を担った。ここで COACH がやったのは人間モデルの代替ではなく、 物語の射程を拡張すること。バーチャルをブランドの声を広げる演者として扱った点が象徴的だ。

imma の実績はラグジュアリーだけにとどまらない。2019〜2020年のPUMA × SLY コラボでは広告ビジュアルの中心として起用され、 東京のストリート感覚をまとったコレクションを牽引した。第1弾・第2弾ともにimmaを前面に出す編集で、 「スポーツ × ヤングファッション × バーチャル」という新しい三角形を、日本の量販価格帯でも成立させている。

2020年の IKEA 原宿では、路面のショーウィンドウに「immaが住む部屋」をそのまま出現させる インスタレーションを展開。LEDと物理空間を重ねる演出で、「バーチャルモデルがリアルの街で暮らしている」 感覚を体験として可視化した。
誰が何を所有するのか:immaの本質は「自社IP化できるモデル」
クライアント企業から見たとき、バーチャルヒューマン最大の魅力は、肖像権と「人格」の安定だ。 スケジュール、トーン、喋り方、世界観までをIPとして設計・管理でき、同じ人格を24時間・多言語・多拠点で 同時に稼働させられる。Awwは2024年に NVIDIA との提携を発表し、対話可能なAI imma の品質向上ロードマップを出した。 immaの「自動運転化」は、イベントや接客、ゲーム内出演など、双方向のオムニチャネルまで広がる前提で つくられている。

Awwは同じ2024年に約600万ドルのシード資金調達も公表し、「バーチャルヒューマンをIP産業として成立させる」 という中長期プランを明確にした。この構造はブランド資産の観点でも意味が大きい。 モデルを単発のキャスティングではなく、ソーシャル、広告、店頭、メタバース、さらにはゲームや ボイスアシスタントにまで一貫して登場させられる長期ミューズに変えられるからだ。市場の追い風も強く、 Grand View Research の推計ではバーチャルインフルエンサー/バーチャルヒューマン市場は 2024年に約60億ドル規模で、2030年まで年平均40%前後で拡大すると見込まれている。
バーチャルモデルが勝てる場面と、勝てない場面
バーチャルが強い場面
- 国や言語をまたぐ大型キャンペーンで、同じペルソナを複数市場に同時展開したいケース。
- 現実世界では撮れないシーンや物理法則越えの世界観をビジュアル化したいとき (COACHの「現実とは何か?」という問いを投げる演出など)。
- 炎上リスクや労務リスクを抑えつつ、発言トーンや態度の一貫性を担保したい場面。
- 24時間365日のオンライン接客やライブコマース。中国ではAIアバターが人間配信者を売上で上回る事例も出てきている。
人間モデルが不可欠な場面
- ランウェイの空気や撮影現場の即興性。予測不能さそのものが価値になるシーン。
- 職人技や肌のテクスチャなど、微細な質感の説得力。ビューティ表現はいまだに生身が強い。
- 歴史や社会背景を背負ったアイコン的カリスマ性。時代の寵児としての重さは簡単に合成できない。
- このためトップブランドは、人間の偶発性とバーチャルの統制を役割分担する方向へ収めんしていくはずだ。
透明性と規制
バーチャルモデルを起用するうえで、透明性の担保は避けて通れない。アメリカのFTC Endorsement Guides は、 金銭的な関係やスポンサーシップの明示を強く求めていて、生成・加工コンテンツによる誤認があれば措置対象になり得る。EUのAI Actもシンセティックコンテンツのラベリング義務化に向かっており、主要プラットフォームはAI生成ラベルの導入を進めている。
「実はバーチャルでした」を後出しするのではなく、最初からオープンにするほうが、むしろブランドへの信頼を積む。 バーチャルであることを隠さない正直さそのものが、長期のブランドエクイティになり得る。
「バーチャルモデルは本物のモデルに置き換わるのか?」
結論はNo。ただしシェアは確実に上がるだと思う。
静止画、プリレンダー映像、多国同時ローンチ、ゲーム内プレゼンス、24時間対応の接客やライブコマースといった 「同一人格の多接点複製」が求められる領域では、一貫性・速度・法務の扱いやすさが意思決定の軸になる。 そこではバーチャルモデルの占有率がこれからも上がっていくはずだ。
一方で、ランウェイの空気や撮影現場の偶発性、肌の微細なニュアンス、歴史・社会を背負った生身アイコンの重みは、 人間モデルの強領域であり続ける。だから最適解は「完全な置換」ではなく「役割の再分担」だと思う。案件ごとに、 人間の偶発性とバーチャルの統制をどんな割合で配合するかを設計する方向に、アートディレクションが収めんしていく。
ブランド側の学び
- 1. 「消費されない」前提で組む
再生数やPVを追いかけるのではなく、ブランドのゴールとimmaのアイデンティティが重なる領域だけを狙う。 短期で使い捨てない前提で、長期の関係を前提に設計する。 - 2. 「一瞬で伝わる」象徴を重ねる
ブランドコードとimmaの記号が、一画面で読み取れるように設計する。 COACHのキャンペーンのように、ビジュアル言語の中で「誰と誰が組んでいるか」が一目でわかることが大事だ。 - 3. 時間と場所を演出する
ティザー→公開→継続接点というリズムを組んでUGCを取りに行く。 IKEA原宿は店頭ウィンドウを「immaが暮らす部屋」という物語の舞台に変え、リアルとSNSの両方で話題を生み出した。 - 4. 人格運用を二層構造で考える
中核の「らしさ」は人間チームが握り、応答や拡張のスケールはAIに任せる。 クリエイティブな判断とオペレーションを分けることで、ブランドらしさとスケーラビリティを両立させる。
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